襦裙は苦手だ
歩きにくいし動き辛い
何より、華やかにたおやかに飾り立てられた自分の姿は
いつも以上に頼りなく見え、どうにも好きになれなかった
だが最近、少しだけその考えが変わった
彼が
誰より表情を制御するのに長けた彼が
襦裙を着ると、一瞬だけ眩しそうに目を細めるのに気づいたから
折りしも女御が彼の到着を告げる
そういえば、宴の前に裁可を仰ぎたい事案があると言っていたっけ
私は彼を通すよう女御に頷いた
背後で聞こえる、涼やかな声と衣擦れの音
私は鏡の中の私と共に、軽く息を吸う
少しだけ速まる鼓動
(私は振り返る。彼の、一瞬の表情の変化を見るために)
2008.11.25