「……畏まりました。では、早急にその件についての資料をまとめます」

「宜しく頼む」

頷いて踵を返した、瞬間だった



「お待ち下さい、主上」

呼び止められ、振り向くと同時に、何かが耳元を掠めた

「失礼」

驚いて立ちすくんだ私の目の前に掲げられたのは、一枚の紅葉もみじの葉

「おぐしについておりました。お帰りは、是非回廊をお使い下さい」



憎らしいほど落ち着いた微笑を浮かべ拱手する男に

私は辛うじて分かったと答え、背を向けた






掠めた指先

(顔に血が上ってきたのは、冢宰府を出てからの事)






                                                                                            



2008.10.26

go page top