政務にきりがついたのは、既に夜半に近い時刻だった
連日連夜の残務に、官の疲れを気にした主上のたっての要望で
今日はある程度の目処が立ったところで彼らを先に帰しており
最後に残ったのは、私一人だった
「遅くまですまなかったな、浩瀚」
「いえ」
あなたは御存知ない
あなたの傍に在り支えることが
何よりの私の望みであり、喜びであるということを
書卓から立ち上がった主上は、窓の外を振り仰ぎ、ふと表情を緩めた
「ああ……明るいと思ったら、もう月があんなに高くに」
一瞬少女の顔に戻り、窓に添った主に目を奪われる
己の心に付いた、愚かな嘘を突き崩されて
傍にいるだけで満足できたら
(だが、それだけでは満足などできないと、誰より自分が知っていて)
2008.09.20